東京高等裁判所 昭和29年(ラ)354号 決定
本件記録を通読してみるに、抗告人主張のように、証人兼藤良三郎、古立良の証言と鑑定の申請は、その立証事項のみについてみれば、唯一の証拠であるということは言い得るが、その立証事実はいわゆる間接事実で、抗告人が立証しようとする事実から、抗告人が本件の起訴前の和解について弁護士兼藤栄に代理権を付与したかどうかの主要事実を立証しようとしているのである。しかして右主要事実については、裁判官原田定吉は抗告人の申請により相当の証拠調をなしているのである。このような場合には、裁判官は間接事実について唯一の証拠方法であるからといつて、採用すると否とは、全くその判断に委せられていて、抗告人主張のように必ず取調べなければならないものではない。故に同裁判官が、一たん許した右両証人の取調べの決定を取消し、又鑑定の申請を許さなかつたとしても、同裁判官に公正を妨げる事情があるとはとうてい認められない。